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第十五章・2

 哲郎は、こう警告をしていた。 『怪しい衣装を着せたり、おかしな道具で責めたり、変な薬を使ったり……』  麻衣は、もうすっかり、響也が変な薬を使おうとしているのだと思い込んでしまったのだ。 (そして先生は、こうも言ってたっけ) 『あいつが妙に変態的なことを要求して来たら、きちんと断るんだ』 (こ、断らなきゃ!)  麻衣は、ありったけの勇気を振り絞って、響也に訴えた。 「響也さん、それは。その変な薬を使ってのセックスは、イヤです!」 「え!?」  響也は、すでに両手に広げてしまっている謎の液体の始末に、困ってしまった。 「嫌かい?」 「哲郎先生が、変な薬はきちんとお断りするようにと、おっしゃいました!」  その言葉に、響也は笑った。 「待ってくれ。これは、植物由来の精油だ。おかしな薬じゃない」  響也が用意したのは、痛みを和らげる作用のある、アロマだったのだ。

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