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第十六章・5
「すごく素敵だったよ、麻衣」
「響也さん……」
「初めてをくれて、ありがとう」
「はい……」
麻衣の髪を梳き、その肩を撫でた。
そんな響也の仕草に、麻衣はようやく人心地着いた。
(僕……。僕、響也さんと、ひとつに……!)
行為の最中は、何が何だか解らなかった。
未知の感覚に溺れ、ただ震えた。
そして。
(僕の中に、響也さんが流れ込んできて……!)
それは、愛の証を贈ってもらったようだった。
響也の愛を、受け止めたようだった。
「響也さん……」
「何だい?」
「幸せです。僕……」
響也の胸に頬を擦り付け、麻衣は瞼を閉じた。
事後の気怠さが、体を包む。
「……」
「麻衣?」
響也に体を預けたまま、麻衣は眠ってしまった。
「疲れたろう。ゆっくり、お休み」
響也もまた、麻衣の髪に顔をうずめて瞼を閉じた。
その良い香りに包まれ、眠りに落ちて行った。
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