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第十八章・2

「しかし、食事を摂らなかったり、睡眠時間を短くしたりすることは、感心できないな。健康を害する」  哲郎は、医師らしい考えを示した。 「そうですな。響也さまが御病気にでもなられれば、本末転倒」 「麻衣さまと過ごすお時間を取り入れたスケジュールを、新しく組んでいただく必要があります」  岩倉も服部も、哲郎の意見には賛成だ。  だがしかし。 「新しいスケジュールとは言っても。削れるような執務はあられませんぞ」 「一体どうすれば、麻衣さまとの時間を捻出できますやら……」  困ってしまった執事二人に、哲郎が手を挙げた。 「いっそのこと、一年間あのワーカホリックから仕事を取り上げちゃったらどうです?」  まるで簡単に、飄々と吐かれたこの言葉に、岩倉も服部も大声を上げた。 「そんな無茶な! 響也さまのスケジュールは、向こう三年間はぎっしり詰まっておいでです!」 「響也さまの代わりを務められる人材も、おりません!」  わあわあと騒ぐ二人に、哲郎は静かに首を横に振った。

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