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第十八章・3

「うん。それは、解ってます。でも、響也の幸せを。今後の人生を、もう少し長い目で見て欲しいな」  は、と執事二人は息を飲んだ。  目が覚めた、心地だ。 「確かに。このままでは、響也さまは仕事三昧で、一生を終えてしまわれる」 「執事として、実りある豊かな人生を、響也さまには送っていただきたいですな」  落ち着き、前を見始めた二人に、哲郎は微笑んだ。 「では。お二人には早急に、響也から仕事を取り上げる作戦を立てていただきましょう」 「承知しました」 「少々、いえ、かなり難しいとは思われますが」  優秀な執事二人だ。  哲郎は、彼らを信頼していた。  きっと響也の体と心に、ゆとりを与えてくれるに違いない。  では、と両手を合わせて明るい音を立てた。 「響也の、妊活作戦を始めましょうか!」 「がんばりましょう!」 「ぜひ、お世継ぎを!」  響也を見守る三人の思いは、固く結ばれた。

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