91 / 230
第十九章 クリスマスがやって来る!
12月に入り、街はすっかりクリスマスムードを纏っている。
この豪華な響也の屋敷もまた、絢爛な装いをするのだろうと、麻衣は考えていた。
ところが、一向にその気配がない。
ツリーも、オーナメントも、イルミネーションも、何も屋敷内外に見られないのだ。
「岩倉さん。響也さんは、クリスマスをお祝いされないのですか?」
「は、はい。それは、その……」
珍しく口ごもる、岩倉だ。
「響也さまは、あまりクリスマスを、お好きではあられませんので……」
「そうですか」
確かに、本来の宗教的な意味合いからは、かけ離れたところもある、この国のクリスマス事情だ。
響也さんは、派手に騒ぎ立てることが、お嫌いなのだろうな。
そんな風に、麻衣は思った。
だが、響也の心中は、麻衣の考えとは大きく異なっていた。
ともだちにシェアしよう!