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第十九章・2

 執務中の響也を、執事の服部が訪れた。  手には、白地に金の縁取りが施された封書を携えている。  その姿に、響也は眉をひそめて実に不機嫌そうな表情を作った。 「響也さま。クリスマスパーティーの招待状が、届いております」 「捨てておけ」  毎年交わされる、この時節のやりとりだ。  だが、今年の服部は一味違う。  なにせ、主の響也には、妊活にいそしんでもらわねばならないからだ。  響也の返事をいったん無視して、服部は続けた。 「差出人は例年通り、孝弥(たかや)さまです」 「だから捨てろと、言ったんだ」 「響也さま。孝弥さまは、血のつながったお兄様であらせられますぞ」  そろそろ、仲良くされてはいかがでしょうか?  そんな、服部の申し出だった。

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