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第二十一章・2
「これまでご婚約なさった令嬢たちも皆、同じストレスにさらされて来られました」
体は妊娠の準備ができていても、心が蝕まれていては思うようにならない。
彼女らは、響也に抱かれるたびに、今度こそは懐妊を、とのプレッシャーを受けていた。
だが、その願いも空しく子どもを授からない。
岩倉は、振り絞るような声を出した。
「麻衣さまは。麻衣さまには、もうそのような苦しみ、悲しみを受けて欲しくはないのです!」
「岩倉さん……」
麻衣は、ほろりと涙をこぼした。
この人は。
この人たちは、こんなにも僕のことを心配してくれていた。
そして、響也さんのことも。
「響也さん」
「麻衣」
「響也さんが病気になったら。僕。僕、悲しいです」
「うん、そうだな」
ありがとう、麻衣。
「そして、皆。すまない」
じゃあ、と哲郎が白衣のポケットに突っ込んでいた手を、出した。
「響也。今後一年間、仕事から離れるんだな? 妊活に、励むんだな?」
「……少し、考えさせてくれ」
響也は、そんな返事を残すと、診察室から出て行った。
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