105 / 230

第二十一章・5

「響也、よく来てくれたな! そして、麻衣くん。初めまして!」  わざわざ屋敷外のポーチまで、孝弥は出迎えに来てくれていた。  そして、その傍には美しい女性がいる。 「響也さん、嬉しいわ。麻衣くんも。寒いでしょう、早く中へ」  彼女は、孝弥のパートナーだ。  仲睦まじい夫婦の間には、まだ幼い娘が二人いる。  特別に暖炉を設けてあるリビングへ通ると、賑やかな子どもたちがお行儀よく挨拶をくれた。 「こんばんは、響也さん!」 「メリークリスマス、麻衣さん!」 「こんばんは。ちゃんと、響也さん、って呼んでくれたね」 「だって。響也おじさま、って言ったら、怒るんだもん!」  笑い声が弾け、アットホームな空気でいっぱいだ。  やがて、響也の弟家族も到着し、飛鳥家の団らんクリスマスパーティーが始まった。  温かい食事を味わい、愉快な会話を楽しみながら、麻衣は時々響也の横顔をうかがっていた。  その笑顔は、作り笑いではない。  それには安堵したが、どこか寂し気な表情だ。 (響也さんのお兄様たちには、お子様がいらっしゃる)  だけど、響也さんには、いない。 (だから、辛いのかな。寂しいのかな、響也さん)  そう思うと、明るい子どもたちの声が、少し憂いを運んできた。

ともだちにシェアしよう!