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第二十二章・2
響也と麻衣が通されたゲストルームは、素敵な空間だった。
響也の屋敷の造りや調度品は、洗練された機能美に満ちている。
かたや孝弥邸は、木の温もりや手作りの楽しさに溢れていた。
「わぁ。何だか、新鮮ですね」
「お兄様の人柄が、現れてるなぁ」
自然味ただよう上質な無垢材で作られた、大きなベッドが二台準備されていたが、二人はそのうちの一台に寄り添った。
「麻衣」
「はい、響也さん」
キスしてくれるのかな、と麻衣はときめいたが、響也はただ彼の肩をそっと抱き寄せた。
「聞いて欲しい話が、あるんだ」
「何でしょうか?」
「……」
「響也さん?」
もう一度改まって、響也は麻衣を見つめた。
「私がなぜ、子ども子どもと躍起になっていたか」
それはね、と響也は瞼を軽く伏せた。
「お兄様を。孝弥お兄様を越えたい。その一心だったからなんだ」
真剣に耳を傾ける麻衣に、響也は語り始めた。
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