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第二十二章・4

「哲郎や服部、岩倉に諭されて、私は初めて自分を顧みることができた」  そして。 「そして、麻衣。君に出会って共に暮らし、笑い合い、ようやく何かをつかめたような気がするんだ」 「響也さん」 「私は、君との間に赤ちゃんが欲しい。それは、飛鳥家の世継ぎにするためではなく」  他ならない麻衣との、愛の証として子どもを授かりたいんだ。  響也の言葉に、麻衣は彼の大きな体にぶつかるようにして、抱きついた。 「響也さん……! 僕、僕、嬉し……、とっても、とっ……!」  涙で、言葉にならない。  だが、その心は充分響也に伝わっていた。  震える麻衣の背を撫でさすりながら、響也は宣言した。 「しばらく、仕事を休ませてもらうことにするよ。重要な事案は、孝弥お兄様にお願いする」 「いいんですか?」 「今は、麻衣を一番に想いたいんだ」  これでいいかな? と顔を覗き込む響也に、麻衣は心を込めてキスをした。  長い口づけの後、互いの顔を見合わせて、微笑んだ。 「メリークリスマス、麻衣」 「メリークリスマス、響也さん」  それは、とても素敵な響きで、二人の心に染み入った。

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