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第二十三章・2
ニヤニヤしている哲郎を、響也は不審に感じた。
「私の顔に、何か付いているのか?」
「いや、そうじゃなくって。麻衣くん、あれは? もう、渡した?」
響也が麻衣を見ると、彼はコートのポケットに手を入れて、小箱を取り出した。
クリスマスカラーのラッピングがしてある、細長い小箱だ。
「響也さん。これ、クリスマスプレゼントです」
「え!?」
驚き、受け取った包みを開けると、中には高級万年筆が入っていた。
「プレゼント何にするか、すごく迷ったんです。哲郎先生に相談したら、響也さんは万年筆が好きだ、って」
確かに学生の頃から筆記具が好きで、一時期は万年筆をコレクションしていた響也だ。
「ありがとう。大切にするよ」
麻衣にていねいにお礼を言い、そして響也は目に見えてうろたえ始めた。
それを茶化す哲郎が、意地悪なことを言う。
「まーさーかー? 響也、麻衣くんへのクリスマスプレゼントを、準備していないと?」
「す、すまない。麻衣、本当にすまない!」
これまで、誰かにクリスマスの贈り物などしたことのなかった、響也だ。
姪っ子たちへのプレゼントで頭がいっぱいで、失念していた!
謝り続ける響也に、麻衣は笑顔だ。
「いいんです。僕が、響也さんに贈り物をしたかっただけなんですから」
そこへ哲郎が、名案を出してきた。
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