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第二十四章 二人同じ部屋で
哲郎から借りた車を屋内駐車場に停めて、二人は老舗百貨店へ入った。
「麻衣、何が欲しい? 好きなものを、何でもいくらでもプレゼントしよう!」
「一つで充分ですよ!」
そんな風にじゃれ合いながら、あれでもない、これでもない、とギフトを見て回った。
それはとても、有意義な時間だった。
「響也さん。なかなか決められなくて、ごめんなさい。疲れませんか?」
「とんでもない。こんなに楽しいショッピングは、久しぶりだ」
合理主義者の響也には、珍しいことだ。
以前の彼なら、ネットショップでさっさと決めてしまうところだ。
麻衣との出会いが、響也を劇的に変えていた。
そして、麻衣はようやく、目を引くアイテムに巡り合った。
「これ、素敵です」
「バングルか」
それは、空色の天然石をあしらった、ハンドメイドのブレスレットだった。
この世に同じ製品は二つとない、一点ものだ。
「これはシルバーだ。もっと高価な。プラチナやゴールドを買ってあげよう」
「でも、スターリングシルバーですよ? 充分、高価です」
「麻衣は、欲が無いなぁ」
とても気に入ったから、と押されて、響也はそれを買い求めた。
もちろん、クリスマスのラッピングも忘れない。
「これは後で。改めて、君に贈ろう」
「ありがとうございます!」
満足げな麻衣だったが、彼にはもう一つ、響也へのおねだりがあった。
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