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第二十四章・2

「ね、響也さん。お願いがあります」 「もう一つ、プレゼントかい?」 「違いますよ!」  麻衣は響也の腕を引いて、パーラーの入口へ連れて行った。 「僕、ここで響也さんと、お茶を楽しみたいです」 「これはまた、可愛らしい願い事だな」  大歓迎だ、と響也は麻衣と共に、パーラーへ入った。 「好きなものを、何でもいくらでもオーダーしていいぞ!」 「お夕食が、入らなくなりますよ!」  そう言いながらも、麻衣はシンプルなダージリンティーの他に、フルーツパフェを頼んだ。 「久しぶりに、思いっきり甘いものを食べたくって」 「そういえば。私も、甘いものは控えているな」  二人には、それぞれ専属栄養士がついている。  一日の総カロリー量はもちろん、塩分、糖質、ビタミンなど、しっかり管理されているのだ。  もちろんそれは、健康を維持するためには重要だ。  だが人間は、理詰めではどうにもならない欲求に、動かされる時があるものだ。 「よし。では私は、ブルーマウンテンと、チョコレートパフェを」  これは、栄養士さんには秘密だ。  二人は背徳感を覚えながらも、冷たくて甘いスウィーツを味わった。 「響也さんのパフェ、一口ください」 「うん。麻衣のものも、食べてみたいな」  こんな具合に、まるで子どものように、はしゃいだ。

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