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第二十四章・3
二人が屋敷へ帰りついた頃にはもう、麻衣の荷物の引っ越しは済んでいた。
「お帰りなさいませ。響也さま、麻衣さま」
出迎えた岩倉は、スーツ姿にやけに明るいチーフを飾っている。
いつもピシリと、フォーマルなコーディネートをしている彼には、珍しいことだ。
だが、それがなぜかは、麻衣の一言で響也は理解した。
「岩倉さん。さっそく、着けてくれたんですね」
「麻衣さまからの贈り物、ですから!」
いつも気遣ってくれる御礼と、麻衣は岩倉にもクリスマスプレゼントを贈っていたのだ。
「参ったな。私は、服部にプレゼントなど贈ったことが無い。
そのお気持ちだけで、充分でございます、と服部が猫を抱いて現れた。
「麻衣さまの持ち物は、これで全てでございます」
「ミドリ!」
麻衣が呼ぶと、ミドリは服部の腕からするりと抜け出し、その足元に擦り寄った。
「これで、パーフェクトだな。麻衣、今後よろしく頼むよ」
「僕の方こそ。響也さん、よろしくお願いします」
ようやくスタートラインに立った心地の、二人だった。
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