122 / 230

第二十五章・3

 翌日、朝食の席。  響也と麻衣は、傍に控える執事の服部、岩倉と共に考え込んでいた。 「私は、朝食の前にスイミングをする習慣があったのだが。麻衣をそれに付き合わせるのは、どうかと思うんだ」 「そうですな。お二人は、年齢も体格も、第二性も違われますので」 「でも僕は、なるべく響也さんのスケジュールを尊重したいんです」 「麻衣さまのお気持ちは解りますが、ここは赤井先生の判断も必要かと存じます」  うん、と一同うなずき、朝食後に哲郎のいる医療スタッフルームへと赴いた。 「食前に泳ぐのは、良いことだ。麻衣くんも、響也に付き合うといい」  哲郎は、結論から述べた。 「でも、僕は泳げないんです」 「それなら、水中でウォーキングをするといいよ」  腰に浮き具かアクアヌードルを着けて、できる範囲で。 「慣れてきたら、歩く距離を長くしていく。これは、結構な運動になるよ」  そして、響也は。 「自分だけぐるぐる泳いでないで、時には麻衣くんの様子を見に行くといい」 「解った。必要ならば、麻衣専属のスイミングコーチを付けるが……」  そこで哲郎は、呆れた、といった表情をした。 「馬鹿だなぁ。響也に教えてもらうことにこそ、意味があるんだ」  ね、と麻衣を見ると、彼は大きくうなずいた。

ともだちにシェアしよう!