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第二十六章・5

「もしもし。早乙女さん、私です」 『え!? あ、飛鳥さん、ですか!?』  突然に変わった電話の声に、麻衣の父親は驚きを隠せなかった。  だが、次の瞬間には、息子を案ずる父の姿を取り戻した。 『飛鳥さん。麻衣は、あなたやお屋敷の皆さんたちと、仲良くできているのでしょうか?』 「ご無沙汰して、申し訳ございません。ご安心を。麻衣くんは、誰からも好かれる、素敵なお人柄です」  電話の向こうで、胸をなでおろす姿が、目に見えるようだ。  響也は、そんな麻衣の父に、改まって願い出た。 「実は、年始のご挨拶に、麻衣くんと共に早乙女さんのお宅へ、伺いたいと思っておりまして」 『うちへ、ですか!?』 「お邪魔でなければ。麻衣くんもご実家へ、たまには帰りたいでしょうから」 『それは、もう! お待ちしておりますよ!』  響也は微笑みと共に、携帯を麻衣に返した。  目を円くしている麻衣は、後はもう二言三言で父との通話を終えた。 「響也さん。早乙女の家へ……、いいんですか!?」 「もっと早くに、きちんと君のお父様に、ご挨拶をするべきだったね」  嬉しさのあまり響也に跳びつき、胸に頭をぐりぐり擦り付ける麻衣だ。  笑い、その髪を撫でながら、響也は新年に対する心構えを作った。  いい年に、しよう。  そんな抱負を、胸に刻んでいた。

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