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第二十七章・3
「お父様、お母様。新年明けましておめでとうございます」
「謹んで、新春のお慶びを申し上げます」
響也と麻衣は深く頭を下げ、心からていねいに両親に挨拶をした。
「明けましておめでとう! よく来たな、響也。そして、早乙女 麻衣くん!」
もうすでに、少しお酒が入っているのか、上機嫌で明るい響也の父・壱郎(いちろう)だ。
「さあ、掛けて。待ちわびましたよ」
優しくソファを勧めてくれるのは、母・凛子(りんこ)。
響也は座ると、改めて麻衣を両親に紹介した。
「お父様、お母様。紹介が遅れて、申し訳ございません。こちらが、私の婚約者・麻衣です」
「初めまして。早乙女 麻衣です」
両親ともに、笑顔で麻衣を見て、口々に彼を誉めそやした。
「早乙女さんは昔から、きれいで正直な商売をなさっている。その御子息なら、安心だ」
「とても聡明でお優しいと、孝弥からも聞いていますよ」
響也は、胸をなでおろしていた。
第一印象の感触は、悪くない。
麻衣の美点をあらかじめ伝えてくれた兄にも、感謝した。
そして両親は、響也が心配していた、麻衣の第二性についても寛容だった。
「何だ、響也。お前、そんな些細なことを気にしていたのか?」
「それは、麻衣くんに失礼というものよ?」
逆に、たしなめられる始末だ。
響也は、すっかり安心した。
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