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第二十七章・5

「あなたが放り出したお嬢さんたちは、飛鳥家が責任を持って良縁を結びました」 「凛子、いつの間に?」 「壱郎さんは本当に、呑気ね」  それなりの名家に嫁いだ彼女たちは、ほどなくして妊娠・出産できたという。  今は、幸せを掴んでいるのだ。 「それは……、良かった。お母様、感謝します」  しかし、それ以上の言葉が出ない、響也だ。  細かく唇を震わせていると、隣から澄んだ声が聞こえた。 「ご安心ください。僕、きっと響也さんとの赤ちゃんを授かって見せます!」 「麻衣」 「響也さん、一年もあるんですよ?」  大丈夫です、と微笑む麻衣が、響也にはひどく頼もしく見えた。  麻衣の元気な振る舞いに、壱郎は大きくうなずき、ぽんと膝を打った。 「凛子。麻衣くんなら、きっと良い子を産んでくれるさ!」 「そうね。信じましょう」  さあさあ、食べなさい。  響也、いい酒があるぞ?  壱郎が、明るく場を仕切り直す。  その流れに身を任せながら、響也はそっと麻衣を見た。  楽しそうな、笑顔だ。  この子と。  麻衣と出会えて、本当に良かった。  新年、改めて味わう心地だった。

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