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第二十八章 その歌に励まされ
飛鳥の本家を後にした響也と麻衣は、そのまま早乙女家へと向かった。
「響也さん、疲れていませんか?」
「私は、大丈夫だよ。麻衣は、平気か?」
互いをいたわり合う姿は、仲の良いパートナーそのものだ。
だが、二人の間には、まだ子どもがいない。
『では、一年経っても懐妊しなかったら。響也、麻衣くんとはお別れね』
こんな、母・凛子の厳しい言葉は、響也の胸に深く刻まれた。
口数の少ない響也に、麻衣は心を痛めた。
(響也さん、お義母様の言葉を気にしてるんだろうな)
この上、早乙女の父が無神経なことを言い出したら、どうしよう。
そんな風に麻衣は案じたが、それは杞憂に過ぎなかった。
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