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第二十八章・2

「明けましておめでとう! 麻衣、お帰り! 飛鳥さん、麻衣がお世話になっております! あ、ご丁寧にお歳暮をありがとうございました! 結構なものを頂戴しまして……!」 「お父様、情報量が多すぎます!」  まあ、そんなことはいいから、と麻衣の父・勝雄(まさお)は、二人の背をぐいぐい押して、屋内へと招き入れた。  麻衣の実家は、響也の屋敷よりやや小さい規模の邸宅だった。  だが、ちゃんと管理をする使用人がおり、料理や飲み物を運んできた。 「おかげさまで、彼らにも暇を出さずにすんでおります」  勝雄は、改めて響也に頭を下げた。  麻衣が婚約者となることを条件に、早乙女家は彼に出資してもらっている。  傾きかけていた家は息を吹き返し、事業も順調に成績を伸ばしているのだ。  響也は、腰の低い義父に恐縮した。 「いいえ、こちらこそ。私は麻衣くんのおかげで、人間的に成長することができました」  その言葉に、勝雄は微笑んだ。 「当初は、どうなることかと案じましたが。麻衣は飛鳥さんの元で、幸せそうです」  可愛いネコを、譲り受けたこと。  秋の庭園を、共に散策したこと。  水泳の、コーチをしてもらっていること。  麻衣のきらめく日々は、電話やメールで知らされている、勝雄だ。  今は、響也のことを『青髭公』とは思ってはいなかった。

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