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第二十八章・4
なぜ 何のために 生きてゆくのだろう
迷った時には 思い出して
胸に宿る 優しい人々の ぬくもりを……
響也の、知らない曲だった。
しかし、美しく澄み渡った麻衣の歌声は、その歌詞を彼の心の奥底にまで染みわたらせる。
まるで聖歌隊の讃美歌のように、魂を震わせる。
いずれは誰もが この地球に 別れを告げて
星々の ひとつになるけれど また 新しい命は 生まれる……
我知らず、響也は一筋の涙を流していた。
心が、洗われる。
浄化されていく。
今一度、生まれ変わったかのような心地を、味わっていた。
やがて歌は終わり、ピアノの調べも余韻を残して消えた。
しかし、麻衣の歌声は、決して響也の中から消えることなく、植え付けられた。
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