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第二十九章・3

『麻衣くんのおかげで、響也は一回り人間が成長しました。感謝しているわ』 「僕は、何も。僕の方こそ、いろいろと助けていただいております」 『赤ちゃんができなければ一年でお別れ、どころか。このまま添い遂げていただきたいと考えています』 「えっ」  ただ。 『ただ、響也が一年で子どもができずに、あなたと別れる、と言えば別なの』 「……響也さんが」 『わたくしの言葉を鵜吞みにして、これまでどおり婚約破棄をする、なんて言えば』  その時は。 『その時は、麻衣くん。響也を見限りなさい。子どもができなかったから離縁する、などと言う情けない男は、あなたにふさわしくありません』 「お義母さま」  凛子の言葉は、響也に厳しく、麻衣に優しいものだった。

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