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第三十章 温泉へ行こう!
一月が去り、正月気分もすっかり抜けた。
二月、といえば。
「節分は、済んだし」
「バレンタインデーも、終わりました」
響也と麻衣の答えに、二人とも月並みだなぁ、と哲郎は溜息をつく。
「そういうお前は、何なんだ」
「哲郎先生、まだ何かあるんですか?」
そりゃあ、決まってる。
哲郎は、人差し指を立てた。
「温泉、だよ。こんな寒い季節は、温泉で身も心も温まるに限る」
なるほど、と響也はうなずいた。
「さっそく服部に、良い温泉地を調べさせよう」
「馬鹿か、お前は」
哲郎は、呆れた声を上げた。
「麻衣くんと、二人きりで過ごすんだぞ? プランも、二人で決めるんだ」
「楽しそうです!」
明るい麻衣の声に、バカと呼ばれて不機嫌になった響也の心は、Ⅴ字回復した。
「では、麻衣。二人で旅行の計画を、立てるか」
「はい!」
仲睦まじく診察室を出ていく二人を見送りながら、哲郎も笑顔だった。
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