145 / 230

第三十章 温泉へ行こう!

 一月が去り、正月気分もすっかり抜けた。  二月、といえば。 「節分は、済んだし」 「バレンタインデーも、終わりました」  響也と麻衣の答えに、二人とも月並みだなぁ、と哲郎は溜息をつく。 「そういうお前は、何なんだ」 「哲郎先生、まだ何かあるんですか?」  そりゃあ、決まってる。  哲郎は、人差し指を立てた。 「温泉、だよ。こんな寒い季節は、温泉で身も心も温まるに限る」  なるほど、と響也はうなずいた。 「さっそく服部に、良い温泉地を調べさせよう」 「馬鹿か、お前は」  哲郎は、呆れた声を上げた。 「麻衣くんと、二人きりで過ごすんだぞ? プランも、二人で決めるんだ」 「楽しそうです!」  明るい麻衣の声に、バカと呼ばれて不機嫌になった響也の心は、Ⅴ字回復した。 「では、麻衣。二人で旅行の計画を、立てるか」 「はい!」  仲睦まじく診察室を出ていく二人を見送りながら、哲郎も笑顔だった。

ともだちにシェアしよう!