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第三十章・2

 とはいえ、スタート地点で響也は困ってしまった。 「旅行プランを立てる、と言っても。出張はいつも秘書が準備していたので、何から始めていいやら」 「響也さん。まず、どこに行くかを決めましょう」 「確かに、そうだな。温泉の名所は多いから、そういうところを検索しようか」 「僕、寒がりですから。暖かい地方がいいです」  土地は、南。  あまり有名ではない、秘湯。  そして、やすらぎの隠れ宿。 「中央から離れるので、交通の便が良くない。レンタカーを、私が運転しよう」 「頼りにしてます」 「……」 「どうかしたんですか?」  じっと麻衣を見つめて固まっている響也は、真顔で口だけ動かした。 「今の、良いな」 「えっ?」 「もう一度、言ってくれないか?」 「? 頼りにしてます」  響也は、指先で眉間を押さえた。 「良いな。実に、良い。麻衣に、そんな風に頼りにされるのは、とても嬉しいし、やる気が出る」 「変な響也さんですね」  ともあれ、スイッチの入った響也は、電車やレンタカー、旅館の予約など、細々としたことをあっという間に済ませることができた。

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