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第三十章・5
せっかく教えてもらったので、まずは裏山の梅を観に行ってみた。
まだ季節は早いが、温暖な気候のせいか、すでに満開の木もある。
「いい香りがしますね」
「桜とは、また違う魅力があるな」
小ぶりの花の、白梅。
清楚で、可憐だ。
(まるで、麻衣のようだな)
響也の頬は、自然とほころんだ。
だが、近寄ってよく見ると、ほのかに紅がさしている。
「これは……」
「何ですか、響也さん」
「い、いや。何でもない」
麻衣の素肌を連想し、響也は一人で照れていた。
真っ白い肌をうっすらと紅に染めて、甘い吐息をこぼす、麻衣……。
次第に響也は、充血してくる心地を味わっていた。
「麻衣。温泉に入ろう!」
「ええっ? 今、梅園に来たばかりですよ!?」
もう少し梅を観たいと、ごねる麻衣だ。
「梅園には、また後で来てもいいから!」
まさか、梅の花を見て、麻衣の裸を見たくなった、とは言えない響也だ。
名残惜しく何度も振り返る麻衣の背中を、押すことが精いっぱいだった。
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