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第三十一章・5

「あ、あぁ、あ! ダメ……、あ、はぁッ!」  麻衣が身悶えするたびに、湯が波打ちしぶきが跳ねる。  その波に乗って、響也は少しずつ腰を動かし始めた。 「う、あぁ、あ! はぁ、はぁ、あぁあ……。あぁ!」 「素敵だよ、麻衣。好きだ……」  自らも昂りながら、響也は今までにない自分を見つめていた。 (温泉とはいえ。まさか、バスタイム中に情事に耽るとは)  以前ならば、こんな行儀の悪いことはしない。  だが、麻衣が。 「麻衣が、あんまり素敵だから……!」 「う、あぁ、あん! くぅ、う、あ。あぁ、あぁあ!」  響也の熱い精が、麻衣の体に放たれた。  背を反らして耐え震える彼を、響也はしっかり抱きしめた。  やがて、二人が奏でた音は鎮まり、静寂が訪れた。  傾きかけた、優しい日の光。  木の葉の、ざわめき。  小鳥が、鳴き交わす声。  その中で、響也と麻衣は重なっていた。 「寒くないか?」 「ええ、大丈夫です」  そろそろ浴衣を着ないと、風邪をひく。  でも、もう少し。  もう少しだけ、そっとこうしていたい。  まるで、ひとつの生き物になってしまったように。  しばらく二人は、動かなかった。

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