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第三十三章・2
麻衣の病状は、なかなか重かった。
午前中は、気分が良いようなのだが、正午を過ぎると、熱が上がる。
「39℃か……」
「ごめんなさい、響也さん」
「謝ることはない。麻衣は、病気なんだから」
「でも。せっかく、僕の誕生日を祝おうとしてくださってたのに」
響也が準備していた麻衣のバースディ・パーティーは、中止になった。
主役が寝込んで出席できないのでは、仕方がない。
だが響也は、優しく麻衣の額を撫でた。
「いいんだ。パーティーは、また日を改めて開こう」
そして、熱い彼の額に、固くしぼった冷たいタオルを乗せる。
すぐにぬるくなってしまうが、響也は何度でもそれを繰り返した。
「響也さん。氷嚢か保冷材に、代えてください」
「タオルでは、間に合わないか?」
「いいえ。でも、あなたの手が氷水で、こんなに冷たくなってしまって」
「そんなことは、気にしないで。さあ、水を飲むんだ」
吸い飲みには、経口補水液が入っている。
麻衣は大人しく、それを飲んだ。
飲んでも、すぐに汗になって出てしまう。
そのたびに響也は、蒸しタオルで麻衣の体を拭き、パジャマを替えた。
そんな日が、続いた。
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