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第三十四章・3
「樹齢800年、1000年、1500年……、2000年!?」
車中で予習しながら、麻衣は名木の履歴に圧倒されていた。
「すごいですね……」
「これらの木々に比べると、ヒトの一生など一瞬の光の矢だな」
「枝の広がりは東西25m、南北20m。生命力溢れる、たくましい姿……」
熱心に学習する麻衣だったが、実際に木の元へ到着すると、そんなちっぽけな知識など吹き飛んでしまった。
「ああ……」
「見事だ」
二人は声を失い、ただ桜を見上げた。
周囲には柵が設けられており、幹を抱くことはできない。
だが麻衣は、その大きく張った枝々に、逆にいだかれているような心地を覚えていた。
美しすぎる。
圧倒される。
だが、決して突き放しはしない、悠久の命の温かさ。
そんな桜を全身に感じ、涙をこぼした。
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