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第三十五章・2

「響也さん、早く! こっち、こっち!」 「ま、待ってくれ、麻衣!」  軽快に馬を駆り、笑顔を輝かせる麻衣。  藪を越え、水たまりを跳ね、草をかき分けて進む。  その技術は、響也の想像をはるかに超えていた。 「全く。すぐに追いつかれてしまったな。この分だと、追い越されるのも時間の問題だ」  動物が好きな、麻衣だ。  馬の気持ちを読むことも、巧いのだろう。 「麻衣、乗馬は好きかい?」 「はい! すごく、楽しいです!」 「よし。では、仕上げに馬場まで競争だ!」 「あ、待ってください!」  先に走り出した響也だが、すぐに麻衣は迫ってくる。 「楽しい! 楽しいな、麻衣!」 「はい、響也さん!」  抜きつ抜かれつ、笑顔を交わしながら、二人は馬場へと駆けた。 「私の勝ちだな」 「いいえ、僕の方が速かったですよ?」  そんな風に、声を立てて笑い合いながら、到着した。

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