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第三十五章・3

 その日、麻衣はよく食べ、よく喋り、よく笑った。 (外乗で、気分が開放的になっているんだろうな)  彼の相手をしながら、響也はそう考えていた。 「と、言うことで、だ」 「何がですか?」  寝室で、ベッドの上に横たわる前に、響也は麻衣に身を乗り出した。 「いや。今夜の麻衣は、とても開放的で素敵だな、と」 「……どうしたんですか、急に」  何か企んでいるのでは、と麻衣は警戒した。  そこで、と響也は仰向けに寝転んだ。 「日中は、馬に乗ったが。夜は、私に跨ってみないか?」 「ど、どういうことですか!?」  詳しい説明は恥ずかしい響也だったが、要するに騎乗位に挑戦してみよう、ということだ。 「僕が、自分で、響也さんを……!」 「麻衣の中に、導いてくれ」  どきどきと、激しく胸が鳴る麻衣だ。  以前聞いた、哲郎医師の言葉が思い出された。 『あいつが妙に変態的なことを要求して来たら、きちんと断るんだ』  こ、これはどうなんだろう。  変態的なことに、入るんだろうか。  ためらっていると、響也から声が掛けられた。 「無理はしなくてもいいよ。だけど、たまには私も、麻衣に愛して欲しいんだ」  そこにあるのは、穏やかな眼差し。  麻衣は決心して、体ごと響也に被さっていった。

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