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第三十五章・4

 上から口づけてくる麻衣を、響也は薄目を開けて見ていた。  いつもとは、逆転している位置。  何だか、甘えた心地になる。  夢中で舌を絡めてくる麻衣に敬意を表して、響也はきちんと瞼を閉じた。  一生懸命に、リードしようとしているのだ。  ただ、彼に任せて、キスに応じた。  やがて麻衣の唇と舌は、響也の耳に移った。  耳から、首筋へ。  首筋から、肩へ。  そして、胸へ。  それは、響也が麻衣に施す愛撫の順番と、同じだ。 「嬉しいな。ちゃんと、覚えていてくれてたんだね」 「響也さん。気持ちいい、ですか?」 「ああ。とてもいい気持ちだ」  深く、熱い吐息を、響也は生んだ。  体の奥が、疼いてくる。  そんな響也を嬉しく思いながら、麻衣はそろりと彼のパジャマを解いた。

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