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第三十七章 Singin' in the Rain
雨が降っている。
しとしとと、長く降っている。
「これでもう、4日目だ」
「前線が、停滞しているようですよ」
この季節、長雨の多い国だ。
お行儀の悪いことに、響也はリビングの床に寝転がっている。
そして、猫がじゃれつくように、麻衣の足首を掴んだ。
「こうも悪天候が続くと、気分も滅入ってしまうよ」
「響也さん。こんな時こそ、アウトドアですよ!」
信じられない、といった顔をして、響也は半身を起こした。
「麻衣は、何を言ってるんだ? 大人しく、一緒に音楽でも聴こう」
それとも、映画がいいかな?
ジムでひと汗流すのも、いい。
また工房に行って、陶芸をしようか。
そんな響也に、麻衣は大きな包みを差し出した。
「はい。プレゼントです!」
「ええっ? 何かの記念日だったっけ?」
「記念日ではないんですけど、プレゼントです!」
何とも怪しい、含み笑いの麻衣の表情だ。
それでも、彼からの贈り物は嬉しい。
「ありがとう。何かな?」
響也は、わくわくと、包みを開けてみた。
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