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第三十八章 海に託すラブレター
青く高い空に、白く輝く雲。
緑繁る島に、熱く焼ける浜。
波穏やかなエメラルドグリーンの海で、響也と麻衣は一週間ほど、スキューバダイビングを楽しんだ。
響也の根気強いコーチのおかげで、麻衣は泳げるようになったのだ。
あれほど怖かった水が、今では親しい友人だ。
サンゴ礁の海を、美しい魚たちと共に自在に舞う、麻衣。
(まるで、人魚だな)
響也は彼に、そんな印象を持って喜んだ。
水中で寄り添う二人を、インストラクターが写真に収めてくれた。
しかし、ホテルに戻ってそれを見た時は、一緒になって笑った。
「これでは、どこの誰だか解らないな」
「こうなることは、考えてませんでしたね」
ウエットスーツを着込み、顔はダイビングマスクとシュノーケルですっかり覆われている。
個人の判別が、まるでつかないのだ。
だが、二人には解る。
二人だけには、解るのだ。
「この写真、大切にしますね」
「私も、だよ」
プリントアウトして、飾っておくよ。
そう、響也は言ってくれた。
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