186 / 230
第三十八章・2
早朝、まだ日が昇りきる前に、麻衣は白い砂浜を訪れていた。
飛鳥家のプライベートビーチであるこの海は、漂着ゴミも毎日片づけられて綺麗だ。
しかし、まだ清掃の行われていない早朝は、わずかながら打ち上げられた物がある。
麻衣は、美しい貝殻を探しながら、それらのゴミも拾っていた。
「そんなペットボトルなど、清掃スタッフに任せておけばいいのに」
「でも僕、一週間お世話になったこの海に、恩返しがしたいんです」
今日は、この地を立ち去る日。
楽しい思い出をたくさんくれた海に、麻衣は心から感謝していた。
「麻衣らしい考えだな。また一つ、君の素敵な一面を見せてもらったよ」
「いいえ。響也さんこそ、僕をここへ連れてきてくださって、ありがとうございます」
そんな優しい会話を交わしながら、二人は静かな浜辺を歩いていた。
「それにしても、様々な種類のゴミがあるな」
「そうですね」
ペットボトルに、レジ袋。
ライターに、食品トレーに、ビーチサンダル。
そして麻衣は、ガラス瓶を見つけた。
ともだちにシェアしよう!