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第三十八章・3
麻衣が手に取ったガラスの小瓶は、しっかりと栓がしてあった。
「中に何か。……紙のようなものが入ってます」
「もしかしたら、メッセージボトルじゃないのか?」
メッセージボトルとは、手紙を封じて海や川などに流された瓶のことだ。
麻衣は、栓を開けてみようとしたが、がっちりと塞がっていてびくともしない。
どれ、と言う風に響也は、手を差し出した。
麻衣が響也に瓶を渡すと、心地よい冷たさと、麻衣の手によってもたらされた温もりが、彼に伝わって来た。
ずいぶん長い間、海を漂っていたのか、ガラス瓶には細かい傷がたくさん付いている。
「割れずに、頑張って泳いだんですね」
「そうだな」
よく見ると、栓の周りに蝋でがっちりと封がしてある。
海水の侵入を防ぐための、知恵だろう。
響也はそれをこそげ落としてから、力いっぱい栓を抜いた。
「開いた!」
「響也さん、力持ち!」
頭を寄せ合って、二人は中の紙を広げた。
「外国語だ」
「英語とは、違いますね」
マルチリンガルの響也は、ほどなくしてその文字の表す意味を翻訳した。
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