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第三十九章 夜のクライシス
「夏は夜、だなぁ」
「枕草子、ですね」
月は出ていないが、とても明るい。
50店舗以上の、ナイトマーケットの照明。
6000灯もの、提灯の灯り。
響也と麻衣の二人は、そんな夏祭りの会場に来ていた。
「それにしても……」
ちらりと麻衣の方を見て、響也は眉間を指で押さえた。
感極まって、言葉が途切れてしまう。
「麻衣が。麻衣が、こんなにも浴衣が似合うとは……!」
「いやですね。お茶の席で、何度も和装を見せてるでしょう?」
麻衣は、紺に白千鳥の浴衣を身に着けている。
普段目にする和装より、ずっとカジュアルな印象なのだ。
響也は、本麻シャンブレーの無地。
一見白色に見えるが、よく見ると薄っすらミントグリーンが入っている。
清々しいその姿に見蕩れているのは、麻衣も同じだった。
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