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第三十九章・2
仲良くそぞろ歩く二人だったが、しだいに周囲を取り巻く人々が増えてきた。
「やけに、混んできたな」
「もうすぐ、花火が始まりますから」
そうか、と響也は腕時計を見た。
「指定席は取ってあるから、急がなくても座れるが」
「そろそろ、会場に向かいましょうか?」
ゆっくりとマーケットを覗きながら、響也と麻衣は花火会場へと歩いた。
アンティーク雑貨や、陶磁器。
アクセサリーや、射的、ボールすくい。
大道芸人に、特設ステージでのライブ。
賑やかな中、麻衣は昔ながらの金魚すくいに目を止めた。
「あ、可愛い」
響也の屋敷には、立派な錦鯉や、美しい土佐金が優雅に泳いでいる。
しかし、小指くらいの小さな金魚が、尾を震わせて進んだりぶつかったりする姿は、麻衣を楽しませた。
「響也さん、僕……。あれっ?」
てっきり一緒に金魚を眺めていると思っていた響也が、ずいぶん先に進んでいる。
金魚すくいをやってみたかった麻衣だが、慌てて彼を追いかけようとした。
そこへ、人波がどっと押し寄せてきた。
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