193 / 230
第三十九章・4
夏祭り会場の外れ、使用しない器材などが置かれた場所へと、麻衣は連れてこられた。
そこには、金髪の若者と同様、下品でだらしない身なりの男たちが、数名たむろしている。
その中の一人が咥えた煙草を吐き捨て、へらりと笑った。
「何だよ、ヤス。やけに可愛い子、連れて来たな」
「一目見た時から、ずっと様子をうかがってたんだよ」
その会話から、麻衣はすぐに悟った。
「響也さんのことは、嘘だったんですね!?」
おそらく、このヤスと呼ばれた男は、響也と麻衣の会話を聞き取り、互いの名前を知ったのだ。
そして、はぐれたところを見計らって、麻衣をここにおびき寄せた。
「僕、失礼します」
すぐに振り返って走り去ろうとしたが、そこにはすでに男の仲間が二名で道をふさいでいる。
「いいじゃねえか。皆で、楽しもうぜぇ」
「録画セット、完了!」
いやらしい笑い声に、麻衣の肌は粟立った。
(この人たち、僕を……!)
いかがわしい男たちは、次第に麻衣に近づいてくる。
(響也さん!)
彼の笑顔を想うと、こんな悪党どもに汚されるわけにはいかない。
麻衣は、覚悟を決めた。
ともだちにシェアしよう!