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第四十章 傍にいてください

「麻衣! 大丈夫か、麻衣!」 「……響也さん!」  響也が現場に駆け付けた時、麻衣はすでに立ち上がって浴衣を整えていた。  怖かった。  恐ろしかった。  だが今は、しっかりと両足で地を踏みしめて、立っていた。 「怪我はないか? ひどい扱いを、受けなかったか?」 「ありがとうございます。僕は、大丈夫です」  そして、響也の後に駆け付けたのは、夏祭り会場をパトロール中の警察官だった。 「無事でしたか!?」 「被害者は?」  警官たちの到着に、響也は驚いた。 「麻衣。君が、呼んだのか?」 「はい」  うなずき、麻衣は明瞭に警察官の尋問に応じた。  しかしその手は、ずっと響也の大きな手のひらを強く握っているのだ。  その仕草に、響也は胸を痛めた。 (可哀想に。怖かったんだな)  それでも麻衣は精一杯、その正義感を振るった。 「あの人たちは、慣れた様子でした。もしかしたら、過去に被害を受けた人がいるかもしれません」  そして、泣き寝入りしているかもしれない。  もしかすると、動画や画像で脅されて、言いなりになっているかもしれない。  それを思うと、麻衣は黙ってはいられなかったのだ。

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