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第四十一章・4

 伸びをしているポーズに、丸くなって寝ているポーズ。  前足を舐めているポーズに、振り向いているポーズに、匂いを嗅いでいるポーズ。  響也と麻衣は、いろんな表情のミドリを作り続けた。 「ああ、楽しいなぁ」 「すごく、楽しいですね」  何気ない会話だったが、響也はその尊さを噛みしめていた。  ゆっくりと流れる時間に身を任せて、ひたすら粘土遊びに興じる。  隣にいてくれるのは、最愛の人。  そんな些細なひとときが、この上もなく大切なものに感じられた。  これまで、飛鳥家の人間として。  アルファ男性として、大会社の社長として、社交界の星として、生きてきた。  しかし、麻衣の隣にいる時は、すべてのしがらみから解き放たれる。  ただ何でもない日常こそが、最高の幸せなのだと、知らされる。  窓から時々入ってくる、少し涼しくなった秋風に吹かれながら、響也はそう考えていた。

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