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第四十一章・5

 ずらりと並んだ無数のミドリたちを前に、麻衣は大喜びだ。 「できた! こんなに、たくさん!」  ありがとうございます、と響也に向けるその笑顔は、無邪気そのものだ。 「これから乾燥させて、素焼きして。絵付けをして、釉薬がけして、本焼きして……」 「陶芸は、本当に時間がかかるなぁ」 「窯出しの時のワクワク感を教えてくれたのは、響也さんですよ?」  完成まで、長くて一ヶ月半、といったところか。  ふと、響也の顔に影が差した。  あまりに毎日が楽しくて。  平和で、愉快で、嬉しくて、素敵で。  つい、忘れていたことがある。 『では、一年経っても懐妊しなかったら。響也、麻衣くんとはお別れね』 『できません、とは言わせませんよ? これは、あなた自身のけじめです』  それは、母・凛子の厳しい言葉だった。  一か月半後には、麻衣と出会った頃になる。  一年経ってしまうのだ。 「どうかしたんですか、響也さん?」  麻衣が、のぞき込んでくる。 「あ、いや。何でもないよ」  頭をもたげてきた不安と焦燥を、響也は振り払った。  私には、麻衣がついていてくれる。 (決して、独りではないんだ)  そう心に刻んで、前を向いた。

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