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第四十二章 ハロウィンの夜に

「響也さん、こんばんは!」 「トリック・オア・トリート!」 「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」  明るい子どもたちの声が、広いダイニングに響いた。 「来たな! モンスター・キッズ!」 「みんな、待ってたよ!」  響也と麻衣は、彼らそれぞれの兄弟家族を、ハロウィンパーティーに招いたのだ。  小さな魔女や、ジャック・オー・ランタン。ゴーストなどの、コスプレ姿の子どもたち。  みんな、お菓子がいっぱい詰まったバッグを二人から受け取り、はちきれんばかりの笑顔だ。  もちろん、保護者も呼んである。 「何だなんだ。響也まで、仮装してるのか?」 「お兄様こそ。何ですか、その恰好は!」  ドラキュラ伯爵のようなマントを羽織った響也は、体中に包帯を巻いている兄を笑った。  弟に笑われながらも、嬉しい長兄・孝弥だ。 (響也。会うたびに、笑顔が良くなるな)  以前は、客人の前では華やかだが作った笑顔を見せていた、響也。  孝弥には、シニカルな笑みを寄こすこともあった。  それが今では、実に柔らかく、優しく笑う。  子どもたちへの視線も、穏やかだ。 (すべて、この麻衣くんのおかげだな)  響也の隣で、オオカミの耳と尾を着けて微笑む、婚約者。  彼らの仲は、間もなく一年となる。  兄もまた、二人の未来を案じていた。

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