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第四十二章・3

「ああ、楽しかった!」 「子どもたち、みんな喜んでくれましたね!」  子どもたちだけじゃない、と響也は麻衣に笑顔を向けた。 「お父様もお母様も、麻衣のことをしきりに褒めてくださっていたよ」 「それは、僕のお父様も同じです」  響也さんを、すごく褒めてくださいました、と麻衣も笑顔だ。  パーティーは終わり、客人たちは皆、帰途に就いた。  そろそろ、それぞれの屋敷に到着した頃だろう。  麻衣の父は、中心街のホテルに宿泊すると言っていた。 「ホテル・アスカです。僕と響也さんが、初めて出会った場所」 「そうか……」 「もうすぐ、一年ですね」  子どもを授からないことを、麻衣は普段口にしない。  しかし、こうまで時が迫ると、つい気にしてしまう。  不安になってしまう。 「麻衣。私は……」 「響也さん、お風呂に入りませんか?」 「えっ?」 「一緒に」  ふふふ、と浮かべる笑みは、さっきと違って妙に艶っぽい。 「そ、そんなこと言って。私がバスルームでモンスターになっても、知らないぞ?」 「今夜は、ハロウィンですからね」  僕だって、魔物になっちゃいますから!  そう言い残して、麻衣はさっさとバスルームへ向かっている。  首を傾げながら、響也はその後に続いた。

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