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第四十五章・3

 私は麻衣とだけは、パートナーとしてこれからも共に歩んでいきたい。  これは、響也の切なる願いだった。 「誰に、どんなに反対されようと、私は彼の傍にいたいと思います。これを否決できるのは、この世でただ一人」  麻衣、と響也は、この一年間苦楽を共にしてきた、大切な婚約者の手を取った。 「君が嫌だと言えば、私は潔く身を引こう」 「響也さん……」  何も迷うことは、無い。  今、麻衣の目の前にいるのは、一年前の響也ではないのだから。  ただの大富豪の御曹司でもなく、御家再建のための道具でもない。  恐ろしい青髭公でもなく、作り笑いの寂しい人でもない。  麻衣もにっこり微笑むと、響也の手に自分の手のひらを重ねた。 「僕も、響也さんの傍にいます。一緒に、未来を築きます」  そんな二人の姿に、麻衣の父は目頭を押さえている。  気を抜くと、涙がこぼれそうなのだ。

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