222 / 230
第四十五章・3
私は麻衣とだけは、パートナーとしてこれからも共に歩んでいきたい。
これは、響也の切なる願いだった。
「誰に、どんなに反対されようと、私は彼の傍にいたいと思います。これを否決できるのは、この世でただ一人」
麻衣、と響也は、この一年間苦楽を共にしてきた、大切な婚約者の手を取った。
「君が嫌だと言えば、私は潔く身を引こう」
「響也さん……」
何も迷うことは、無い。
今、麻衣の目の前にいるのは、一年前の響也ではないのだから。
ただの大富豪の御曹司でもなく、御家再建のための道具でもない。
恐ろしい青髭公でもなく、作り笑いの寂しい人でもない。
麻衣もにっこり微笑むと、響也の手に自分の手のひらを重ねた。
「僕も、響也さんの傍にいます。一緒に、未来を築きます」
そんな二人の姿に、麻衣の父は目頭を押さえている。
気を抜くと、涙がこぼれそうなのだ。
ともだちにシェアしよう!