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第四十五章・4

 凛子はゆっくりうなずくと、壱郎に目で合図をした。  その仕草に壱郎もうなずくと、視線を麻衣の父に向けた。 「では。早乙女さん、よろしいですか?」 「はい」  麻衣の父がうなずくと、壱郎はひとつの小箱をテーブルの上に置いた。 「よく言った、響也。そこまで覚悟ができているのなら、私たちも二人を祝福しよう」  そして、小箱を響也の方へ差し出した。 「これを、お前から麻衣くんへ渡しなさい」 「飛鳥家に伝わる、指輪よ」 「お父様……、お母様!」  ありがとうございます、と響也は小箱を受け取った。  中にはベルベットケースが入っており、開けると繊細な透かし彫りの施された、美しいダイヤモンドリングが輝いていた。 「これがゴールじゃない。スタートなんだ、麻衣」 「着けてくれますか、響也さん」  響也は麻衣の白い指に、静かにリングを填めた。 「良かったな……。良かったな、麻衣!」  とうとう涙を流しながら、麻衣の父は拍手を贈った。 「ありがとうございます、お父様!」 「麻衣は、必ず幸せにします!」  凛子と壱郎も、笑顔で拍手を始めた。  皆に祝福され、二人は幸せだった。

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