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第四十五章・5
本家から響也の屋敷へ帰る車中、麻衣は薬指からリングを外した。
「麻衣。もう、外してしまうのか?」
「傷つけたり、失くしたりしたら、大変ですから」
「そうしたら、私が代わりの指輪をまた贈るよ」
「でも……。代々伝わる、大切な指輪です」
そんな麻衣からリングを優しく取り上げると、響也は改めて彼の指に着けた。
「私と麻衣が、新しい歴史を作って行けばいい。そう、思わないか?」
「響也さんは、前向きですね」
君のおかげで、前向きに考える力が、身に着いたんだよ。
リングを填めた麻衣の手をそっと上へ持ち上げて、響也はその甲に口づけた。
「麻衣、結婚しよう。婚約は、もう卒業だ」
「はい、響也さん」
満面の笑みに、清らかな涙を浮かべている麻衣は、息を飲むほど美しい。
「まるで……。まるで、初めて出会った時のような鮮烈さを、感じるよ」
響也は、深い溜息をついた。
パーティーの喧噪の中、そこだけがしんと静まり返っているような美が、あった。
まるで、天使が舞い降りて来たかのような。
そんな麻衣を、思い出していた。
「あの時から、私の恋は始まっていたよ」
「僕も、ひと目で響也さんを好きになりました」
ああ、そして私たちは。
僕たちは。
同じ時を経て。
今日、ここに結ばれる。
この恋は、運命だったんだ。
二人の思いは、同じだった。
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