226 / 230
第四十六章・2
「いけない、いけない。早く帰らないと、麻衣が心配する」
今日は、響也の誕生日だ。
きっと麻衣は、何か準備してくれているに違いない。
私のために。
特別ディナーや、バースデーケーキ。
誕生日プレゼントに、祝いの宴。
「自分の誕生日なんて、大人になってからは完全にスルーしていたのにな」
誰かが、お祝いしてくれる。
それがこんなにも、胸躍ることだったとは!
響也はいそいそとデスクを片付け、コートを羽織った。
秘書と翌日のスケジュールを確認し、社長室に一番近い事務所に顔を出した。
「すまないが、私はこれで帰らせてもらうよ」
「飛鳥社長、お疲れさまでした!」
「どうぞ、急いでお帰りください!」
「麻衣さん、待ってますよ!」
口々に労いの言葉をかけてくれる、社員たちだ。
こんな、一般社員とのふれあいも、妊活を経た後で始めた。
それは、とても意義深いものだった。
ともだちにシェアしよう!