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第四十六章・2

「いけない、いけない。早く帰らないと、麻衣が心配する」  今日は、響也の誕生日だ。  きっと麻衣は、何か準備してくれているに違いない。  私のために。  特別ディナーや、バースデーケーキ。  誕生日プレゼントに、祝いの宴。 「自分の誕生日なんて、大人になってからは完全にスルーしていたのにな」  誰かが、お祝いしてくれる。  それがこんなにも、胸躍ることだったとは!  響也はいそいそとデスクを片付け、コートを羽織った。  秘書と翌日のスケジュールを確認し、社長室に一番近い事務所に顔を出した。 「すまないが、私はこれで帰らせてもらうよ」 「飛鳥社長、お疲れさまでした!」 「どうぞ、急いでお帰りください!」 「麻衣さん、待ってますよ!」  口々に労いの言葉をかけてくれる、社員たちだ。  こんな、一般社員とのふれあいも、妊活を経た後で始めた。  それは、とても意義深いものだった。

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