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 このアパートは一階に玄関が四つ並んでいて左端から一〇一、ニ〇一、ニ〇ニ、一〇ニの四軒のみ。  ファミリータイプのアパートで一階の二軒はどちらも二十代後半の女が子供を抱えていたり、足元にくっつけた状態で出てきた。 「あ、二人もルームシェアですか?」 「まぁ、そうですね!“も”っていうのは?」 「うちの上も大学生の男の子二人でルームシェアなんですよ!夕方に行ったらどっちかは帰って来てるかな?」  一〇一の女はにこにこと教えてくれて最後は笑顔で手を振る。 「隣は今は留守だとよ。でも、同じ大学生であっちも男二人暮らしなら気楽かもな?」  笑いながら玄関を開けると、宮部は挨拶で渡すはずだった地元のお菓子を持って中には入ってきたが反応はなかった。 「……宮部?」  宮部の手から取ったお菓子を玄関のシューズボックスの上に置くと、宮部はチラッとこっちを見る。 「何?」 「……楽しそうだった」  呟くように言ってまたすぐに目を逸らすその肩を抱き寄せると宮部は慌てて逃げた。 「バーカ。狭いし簡単に逃げらんねぇぞ?」  ニヤリと笑って壁に押し付けてやると宮部はワタワタと慌て出す。  くそっ……耐えたのにこの純情野郎が。 「妬いたんだ?」  冷静なフリをしてゆっくり顔を近づける。  フルフルと震える宮部の両頬に手を添えるとギュッと両目を閉じている宮部を見下ろした。

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