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「俺らは星山大で四年なんだけど……」 「あ、俺も星山大です!入学式まだですけど」 「え!俺、文学部!」 「現代社会学部です」  盛り上がり始めたことにハッとして宮部を見るが宮部は特に何も反応していない。 「あ、悪い、悪い!荷物重いよな!お互い!また、キャンパスでも会うかもだし……またな!」 「あ、ついでに引っ越しの挨拶渡しても……」  言いながら鍵を開けてパッとその菓子を手にすると宮部が変な顔をしていた。 「……何だよ」 「荷物持ってるのに、迷惑」  玄関の中で固まると外から笑い声が聞こえる。 「ははっ!むしろ、ちょっと待ってて!」  ドアから覗くと、パッと素早く鍵を開けて男はそのドアの向こうに消えてしまった。 「……とにかく荷物貸せ」  宮部の手にある買い物袋をもらって玄関に置くと、バタバタと階段を降りてくる音がする。 「ほい!甘い物好きかわかんないけど……引っ越し祝い!昨日、創介が作っててさ!いっぱいあるからよかったら食べて!」  ピンク色のロールケーキをもらって菓子折りを渡すと男は「じゃあなっ!」と笑顔で手を振った。 「……爽やかイケメン」 「イケメン彼氏を前に言うな」 「妬いてる?」 「あぁ!妬いてるよっ!!」  玄関のドアを閉めつつ呟いた宮部の言葉に反応して余裕もなくスネてしまう。  笑う宮部にケーキを渡して買い物袋を二つとも持つと俺はさっさと階段を上った。

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