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「……バイトしてきたんだよ」
「バイトぉ?」
想像もしていなかった言葉にびっくりして体を離すと、宮部は頷きつつも目を逸らす。
そのまま中途半端になっていた腰を降ろして床に体育座りをすると、自分の足先を見つめた。
「百華さんと静華さんが色々してくれてこのアパート代は村瀬くん家とお母さんが折半して払ってくれることになっただろ?」
たぶん母さんが説明したであろう……が俺は宮部と暮らす、たぶんそれしか頭になかったのか記憶にない。
「……詳しくはいいや。生活するにもお金が要るだろ?僕はお母さんにこれ以上甘えられないし自分で何とかしないと」
俺がわかっていないことを悟ったのか話を進めることにしたらしい宮部の前で俺もあぐらをかいた。
「工藤 先生も電話くれたんだよ」
「くーちゃんが?俺には何の連絡も……ってか、何であいつの番号知ってんだよ!」
工藤は高校時代の恩師(何だかんだ高校の三年間ずっと俺たちの担任)だ。
三十超えているようには見えない童顔に一六五もない身長。男にしておくのはもったいないような整った顔に大きな目。
かわいらしい見た目とは違ってはっきり物を言うし、うちの母さんと一緒に宮部がうちで暮らしたり進学もできるように尽力してくれた恩人ではある。
「何か困ったことがあったら連絡しろって教えてもらってたけど?」
「いつから?」
「……高一」
俺がスネ始めたことを感じ取ったらしい宮部が答えにくそうにまた少し身を小さくした。
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